業務指示の質が店舗運営を変える|出版記念セミナー開催レポート
2025年11月18日、東京・丸の内にて書籍『業務指示マスターガイド』の出版記念セミナーを開催しました。
平日のご多忙ななか、ご参加いただきました皆さまに、あらためて御礼申しあげます。

企業における"手戻り削減"や"業務効率化"への関心が高まるなか、日々の業務指示の見直しはますます重要性を増しています。
本セミナーでは、現場で起こりがちな課題と、それを改善するための具体的な視点を、書籍の内容と実例を交えながら掘り下げました。

『業務指示マスターガイド』出版に込めた想い
── なぜいま"業務指示"なのか|リンコム 代表取締役 野村
冒頭では、業務指示に対し現場(店舗スタッフ)から寄せられる課題感が紹介されました。
「何をすべきかが曖昧」
「説明文が長く理解に時間がかかる」
「添付を開かないと意図がつかめない」
小売企業では日々多くの業務指示が本部から店舗宛に出されますが、業務指示の書き方に対するルールや教育が無いため、店舗での作業ミスや手戻りを誘発しやすく、現場から最も多く寄せられる悩みの一つです。
リンコム自身が業務指示を出す立場ではないため、どこまで踏み込むべきか迷いはありましたが、「お客様の成果につなげるためには、業務指示を無視して通れない」という強い確信が出版の原動力となりました。
第三者だからこそ見える視点を体系化し、業務に役立つ形として届けたい──その想いが今回の「業務指示マスターガイド」出版のきっかけとなったのです。
株式会社フジ様の"リアルな業務指示改革"
── 現場負荷の根本に向き合った、着実な改善プロセス
続いて、株式会社フジの藤本様・岩本様より、同社の業務指示改革の歩みが紹介されました。
516店舗、49,000名の従業員を抱える同社では、指示の揺らぎが全体に波及します。
そのため業務指示の質は経営レベルの重要テーマです。
かつては以下のような社内連絡ツールが複数散在しており、必要な情報を探すだけで多くの時間が奪われていました。
- 外部メール
- 社内イントラメール
- 部門ポータル
- 掲示板
- 文書管理システム
「必要な情報がどこにあるのかわからない」という状態が常態化していたといいます。
見落としや手戻りもおおく、"誰も悪くないのに仕組みのせいでミスが起こる"という現場特有のもどかしさが共有されました。
一歩目は"業務指示とは何か"をそろえること
改革の起点になったのは、業務指示の定義を明確にすることでした。
『業務指示』は実行が必要で、期限があり、かつ完了確認が必要なもの
この共通言語ができたことで、「周知」と「業務指示」が区別され、本部も店舗も判断に迷わなくなりました。
"書き手のクセ"をなくすテンプレート運用
次に取り組まれたのが、店番長を使った業務指示のテンプレート化です。
テンプレートで特に重視したポイント:
- タイトルを見て内容がイメージできる
- 情報を詰め込みすぎない
- 送りっぱなしにせず完了確認まで行う
こうしたルールにより、書き手による品質差が減り、指示の解釈違いも大幅に減少しました。
ルールが定着すると、現場に変化が生まれる
継続した取り組みの結果、現場には以下のような変化が生まれています。
ルール定着で生まれた変化:
- 指示内容が明確になり迷わなくなった
- 残作業がひと目で把握できるようになった
- 手戻り作業が減り実行率が安定
- 無駄が減り心理的負担も軽減
「やることが明確になったことで現場が楽になった」という声が多く、業務指示を整えることの効果をあらためて感じる場面となりました。

書籍に寄せて|今日から現場で使える業務指示改善のコツ
後半では、書籍の著者である細野・江上・玉城が登壇し、現場支援で培った知見をもとに、業務指示の改善ポイントを共有しました。
理論だけではなく、実務に近い視点からの話が続き、会場は静かに集中した空気に包まれていました。
業務指示は"高価なリソース"であるという視点|リンコム 細野
業務指示は"ただの連絡"ではなく、人と時間という経営リソースを動かすものです。
曖昧な指示は、確認や解釈、手戻りといった「見えない負荷」を各所に生み、結果として無視できない規模の損失につながることもあります。
過去の支援事例では、業務指示にまつわる"見えにくいコスト"が企業全体で膨らんでいたケースも存在し、いったいどのくらいの金額が無駄になっていたのか、実例を交えてご紹介をしました。
業務指示は小さな改善で大きな変化を生む領域です。
本部の1人が普段より時間をかけたとしても、よい業務指示であれば指示を受けた店舗分の人数の時間を節約することができます。
業務指示を書く際に持つべき視点として、「これは無駄か?それとも戦略的投資か?」という問いを掲げ、「業務指示がコストである」という共通認識の重要性をお伝えしました。
文章より"構造" 迷わない指示に必要な視点|リンコム 江上
業務指示の品質は文章力ではなく「構造」で決まります。
特に、業務指示には欠かせない「4つの要素」があり、これらが揃っていないと現場に解釈の揺れが生じてしまいます。
このセクションでは「情報量が多すぎて読みづらくなるケース」「期日・注意事項が混在して混乱を招くケース」など、現場で生じがちな"見えない無駄についてご紹介しました。
テンプレートで書き手のクセを減らすことや、必要な情報を簡潔にまとめる重要性、「1文でも短くする」という小さな工夫とこだわりをルールとして定めることで、現場の負担を大きく軽減します。
「会社で決めたルールが守られているか?」という業務指示のチェック役を置く「ゲートキーパー制度」についても、ゲートキーパーになれる人の素養や実際の運用例を交えながらご紹介をしました。
「まずはテンプレート通りに書けているかの確認だけでも十分です」と呼びかけ、大きく取り組みを始めなくても、今すぐに取り組める改善についてご紹介し締めくくりました。
実行で終わらせない。"検証"が成果をつくる|リンコム 玉城
熱心に取り組んでいるのに成果が見えない背景には、組織体制やコミュニケーションなど様々な要因があります。
その中でも共通して欠けがちな要素として、"実行後の検証"があります。
業務指示は「出す・実行する」で終わりにするのではなく、「期待通りだったか」「何が良く、どこに改善の余地があったのか」を振り返ることによって、さらなる改善につなげることが肝要です。
この"振り返り"が抜けてしまうと施策がやりっぱなしになり、成果が出ずに終わることが多いのです。
このセクションでは現場と対話しながら施策を試し、振り返りを重ねて改善していった企業の例をご紹介いたしました。
「業務指示を出す」「実行する」「検証する」という循環が、行動変化と成果に結びつき、目標達成への近道となることをご紹介し、「改善を回せる組織は、自然と現場の課題が見えるようになります」と締めくくりました。
ご参加者様の声
セミナー後には、
「損失の捉え方が新鮮だった」
「ゲートキーパー制度を小さな範囲から試したい」
「自社の課題に当てはまる部分が多かった」
など、多くのご感想をいただきました。
普段の業務の中で気づきづらい視点や改善のヒントをお持ち帰りいただけたのではないかと思い、社員一同大変うれしく思います。
終わりに|業務指示の改善は"働く人を楽にする仕組み"
業務指示の改善は、一度整えれば終わりではなく、現場とともに育てていく"仕組みづくり"です。
伝わる仕組みが整えば、現場の無駄が減り、スタッフの心理的負担も軽減されます。
リンコムでは今後も、本部・店舗で働く皆さまが少しでも楽になるよう、業務指示改善や店舗運営支援に取り組んでまいります。
引き続き、リンコムの取り組みにご注目ください。
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