退職理由から考える「人手不足」
「せっかく採用したのに、また辞めてしまった」
店舗運営に関わる方なら、一度は耳にした言葉ではないでしょうか。
チェーンストアの多い小売業や飲食・サービス業は、もともと人が定着しにくい業界だといわれています。
新規大卒者が3年以内に退職する割合を見ても、宿泊業・飲食サービス業は55.4%、生活関連サービス業・娯楽業は54.7%、小売業は40.4%など、いずれも全産業の平均(33.8%)を上回っています(*1)。
では、なぜ人は辞めていくのでしょうか。
今回は、チェーンストアで人が辞める理由と、その背景を考えてみました。
退職理由に見えてくる『人間関係』
厚生労働省の調査によると、若い人が初めての会社を退職した理由では、「人間関係がよくなかった」は26.4%で2位でした。ところが、初めて勤務した会社を3か月未満で辞めた人に限ると、1位は「人間関係がよくなかった」(52.3%)だったのです(*2)。
上司と部下は、すれ違っている
「前にも言ったよね?」「言わなくてもわかるでしょ」
職場でよく耳にする言葉です。
上司には何度目かの注意や当たり前のことでも、部下には「そもそも聞いていない」こともあります。
ある調査では、上司との関わりに困っている部下の困りごとの1位は「指示が曖昧」(43.2%)、上司の困りごとの上位には「指示待ちが多い」(45.3%)が挙がりました(*3)。お互いに、相手の側に問題があるように見えているのです。
チェーンストアでは、本部の指示やお知らせが、SVから店長、部門リーダーからアルバイトへと人を介して伝わります。人を介するたびに、まるで伝言ゲームのように、届く内容には少しずつ差が出ます。
もちろん、人間関係がこじれる原因はさまざまです。ただ、「伝えたつもり」「聞いていない」という情報のすれ違いが、その一因になることもあるのではないでしょうか。
そして、その差に気づかず「もう伝わっているはず」と注意をすれば、「そんなこと聞いていない」という反発が生まれ、やがて「あの人とは合わない」という人への不満に変わることも考えられます。
問題は「誰が悪いか」ではなく、「どこですれ違ったか」なのかもしれません。
全員が、同じ情報を見られる状態に
あるチェーンストアの方から、人と人が関わる以上、好き嫌いや相性はどうしてもある、というお話を伺いました。苦手な人には説明が少なくなり、仲の良い人には頼みすぎてしまう。情報の差は、人と人の相性からも生まれます。
では、全員に同じ指示を一斉に送ればよいのでしょうか。送るだけなら、メールでもできますが、返事が来ないとき、その店舗が見落としているのか、まだ手をつけていないのか、あるいは店舗で何か問題が起きているのかは分かりません。分からないまま「やっていないじゃないか」と個別に注意すれば、ここでもすれ違いが生まれます。
また、別のチェーンストアでは、指示の進みが遅れている店舗の責任者に「どうしたの?何かあった?」と一声かけることが、相談のきっかけになっていると伺いました。責める前にたずねられるようにするためにも、現在の状況だけでなく、これまでの経過も含めて、誰がどの指示を見て、どこまで進んでいるかを確認できる状態が望ましいでしょう。
そうすることで「いつもできていないのか」「今回だけ何かあったのか」も自然と分かり、声をかけやすくなります。
今いる人が、長く働き続けられる職場へ
これは、本部と店舗のあいだだけの話ではありません。店舗の中でも、社員かパート・アルバイトかに関係なく、受け取るべき人がみな同じ情報を受け取れているでしょうか。「前にも言ったよね」と言う前に、その情報は正しく相手に届いていたでしょうか。
まずは「どう受け取っていた?」「どの情報を見ていた?」と一度確かめてみるのはいかがでしょうか。伝言ゲームになっていたのか、違う情報を見ていたのかが分かれば、注意を減らせる場面もあるはずです。
「仕事は好きだけど、あの人が嫌で辞める」
人間関係に見えるそんな退職の一部は、情報の届け方という仕組みで減らせるかもしれません。採用を増やすだけでなく、今いる人がお互いを嫌いにならずに長く働き続けられる職場をつくること。これも大切な人手不足対策なのではないでしょうか。
出典
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」2025年10月
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html - 厚生労働省「令和5年 若年者雇用実態調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-r05.html - Job総研(パーソルキャリア株式会社)「2026年 上司と部下の意識調査」(2026年5月、20〜50代421人)
https://jobsoken.jp/info/20260601/
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