「指示の伝言ゲーム」が生む現場のズレ ~年末の忙しさを乗り切るために見直したい"伝え方"
こんにちは、リンコムの野口です。
日々、全国のチェーンストア企業の担当者様とお話する中で、最もよく耳にするのが「本部の指示が現場にうまく伝わらない」「言ったはずなのに、やってもらえていなかった」といった声です。
どの企業も仕組みやルールは整っていても、実際の現場では"ちょっとした伝達のズレ"が思わぬ混乱を生むことがあります。
今回は、そんな"指示の伝言ゲーム"がなぜ起きるのか、そして現場でどんな影響を与えるのかを、実際にありそうなエピソードを交えながら考えてみたいと思います。
「指示の伝言ゲーム」が生む、現場の小さなズレと大きな混乱
「え?聞いてないですよ!」
金曜の夕方、ある店舗のバックヤード。シフトに入ったアルバイトのAさんが、POPを張り替えようとした瞬間、店長が慌てて声をかけました。
店長「ちょっと待って! 新しいキャンペーンは明日からでしょ!」
Aさん「え? 昨日の引き継ぎで"今日から"って聞きましたよ?」
お互いに悪気はない。けれど、その一言のズレで店頭には誤った表示が貼られ、数時間後にはお客様から「他の店舗ではもう値段が違う」と指摘されることに。
本部から送られた指示は「週末からスタート」。
途中のどこかで"週末=金曜夜"にすり替わってしまったまさに"伝言ゲーム"の典型です。
「急ぎで」って、どのくらい急ぎ?
ある日、本部から各店舗に一斉連絡。
「至急、対象商品の陳列をストップしてください。」
しかし、翌日になってもまだ売り場に並んでいる店舗がちらほら。確認すると、スタッフごとに受け取り方が違っていました。
「"至急"って言われても、他の作業も詰まっていたし...」
「自分のシフトの時間内には手が回らなかったんです」
"至急"という言葉の温度感は、人によってまるで違います。
指示が具体的でなければ、現場の優先順位の中で埋もれてしまう。これはどのチェーンでも起こりがちなことです。
「伝わったと思ってた」
ある店長さんはこう嘆きます。
「本部の指示はちゃんと店舗ミーティングで共有したのに、実行されていない時があるんですよ。」
よくよく聞いてみると、その店では朝礼の参加メンバーが日によってバラバラ。伝達が一部のスタッフで止まってしまい、夜のシフトに入るメンバーには届いていなかったのです。「伝えたつもり」 「聞いたつもり」 この小さな思い込みが、現場を混乱させていきます。
伝言ゲームの正体は、"人の解釈"
指示の内容そのものよりも、伝える人・受け取る人それぞれの"解釈"がズレを生みます。
たとえば、
- 「すぐに」と言われて、"5分以内"と思う人もいれば、"今日中"と思う人もいる。
- 「売り場を整える」と言われて、"商品を揃える"と理解する人も、"レイアウトを変える"と考える人もいる。
人の数だけ解釈があり、それが連鎖すると、本部の意図はどんどん形を変えてしまいます。
「正しく伝える」、そして「同じ理解を持つ」へ
"伝言ゲーム"をなくすためには「正しく伝える」ことと、「同じ理解を持つ」ことが大切です。
どんなに丁寧に伝えても、相手が違えば受け取り方も違います。
だからこそ、
- 曖昧な表現を避け、数字や日付で具体的に伝える
- 伝達ルートを短くし、直接届く仕組みを作る
- "言った・聞いた"ではなく、"理解できたか"を確認する
こうした工夫が、現場の混乱を防ぐ一歩になります。
さいごに
「伝言ゲーム」は、子どもの遊びなら楽しい笑い話で済みます。でも、店舗運営の現場では、小さなズレが売上や信頼を揺るがすこともあります。
現場が動きやすくなるのは、「ちゃんと伝わった」瞬間ではなく、「みんなが同じゴールを見て動いている」瞬間。
もしも同様のエピソードに心当たりがある方がいらっしゃれば、年末の繁忙期に入る今こそ、情報伝達の仕組みを整える好機です。本部と現場が同じ方向を向いて動ける体制づくりが、売上だけでなく、スタッフの安心にもつながります。
"忙しい時期をどう乗り切るか"
その鍵は、実は日々のコミュニケーションにあるのかもしれません。
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