国が滅ぶとき、組織が崩壊するとき
大好きで読み進んできた塩野七生さんの「ローマ人の物語」もようやく佳境に入ってきました。そもそもこの長編を読み始めたきっかけは、繁栄してきた国家が滅ぶ理由について興味があったからですが、1000年続いたローマ帝国の物語もいよいよ綻びが始まったまさにその部分へと読み進んできました。塩野七生さんの解釈とはちょっと異なった視点ですが、読んでいるうちに国家が滅ぶ理由にふと思いが至りました。それは一言で言えば「たががゆるむ」ということに尽きるのではないか。繁栄の頂点に行き着いた国家はかつての貧しさや危機感を忘れ、緊張感が欠如するために内部崩壊するのだと思います。
他国に侵略されて国家が滅ぶということもあるかもしれませんが、実は危機感と緊張感を持って一致団結した場合は、他国の侵略を追い返すことが可能で。幕末から明治維新がそうでした。侵略を許すということは、実は内部崩壊がその遠因となっているのでしょう。今の日本を俯瞰したとき、まったくこの「たがが緩んだ状況」というのは目を覆わんばかりです。いちいち書いていたら日が暮れるほど、一般企業、官僚、政治家のたがのゆるみ、緊張感の無さはほとほといやになります。
それを許す国民の「たがの緩み」がその原因となっているのは議会制民主主義を採用している日本の宿命でしょう。政治はその国民のレベルを超えられないという定説がありますが、まさにそれです。国が何もしてくれないとか、景気がわるいからとか、外部の要因をあげつらうだけで、自分が国や他の人のために何ができるか、という視点や意識がまったく感じられません。今の日本はとても深刻な状況です。
企業経営者として会社の一生を見たときこの国家の衰亡がそのまま当てはまるのではないかと最近思うようになりました。緊張感がなくなるとき、たがが緩んだとき会社は崩壊します。会社や社員が豊かになっても経済的に満足しきってしまうのではなく、別な何か、崇高な目標に向かっての飢餓感を失わない、そんな会社は長期にわたって繁栄すると思います。
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