AI・ロボットは仕事を奪うのか?

このコラムでも何度となくAI・ロボットが人間の仕事を奪う未来について触れてきました。オックスフォード大学や野村総研の研究結果を取り上げて、職業ドライバーを筆頭として自動化によって人の仕事はなくなってしまうという危惧に私自身が大きな懸念を持っていたからです。失業者が大量発生し世界的にベーシックインカム制度が整うまでの社会不安は、人類史上最大の災厄になる可能性があると思っていました。

しかし、最近考えがかなり変わってきました。「働くこと=社会に貢献すること」が正しいこととして何千年も続いた人間社会が、この根本の価値観を根底から覆すことはないのではないか、と思えてきたのです。仮にシンギュラリティが起こってAI・ロボットが人間の仕事のほぼすべてを代行し、しかも圧倒的に生産性を高めた社会では、政府から支給されるベーシックインカムで高水準の生活は保障されるでしょう。しかし、本当にそれで多くの人が生きている実感を得られるとは思えないのです。

おそらく、第一次産業と第二次産業のほぼすべてはAI・ロボットに置き換わるでしょう。しかし、人をもてなす仕事であるサービス産業の多くは人の仕事として残るはずです。21世紀も後半に入り高生産性を達成している社会では週休4日は当たり前となり、人々は余暇を今の数倍楽しめることになります。家で引きこもってバーチャルなゲームやショッピングに費やす人もいるでしょうが、多くは外出すると予想します。生物の基本欲求ですから。

家を飛び出した大量の人間を吸収するのは、旅行、ホテル、アミューズメント、外食、ショッピング、スクールであり、こここそが第一次、第二次産業から移ってきた労働力が活躍するフィールドなのでしょう。18世紀の産業革命以降、農業人口が工業人口へ2百年かけて移行し、さらにコンピュータとインターネットがオフィスワーカーとサービス従事者を創出してきた大きな流れ。このような低次産業から高次産業への人口移動と結局は同レベルの移行が、AI・ロボットによって起こるだけなのではないかと、最近では楽観視しています。

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