日本の人口減少問題がアドバンテージになる

労働人口の減少の加速化とともに、日本における移民の是非を議論する場面があちこちで増えてきたようです。私も以前は積極的な移民受け入れ論者でした。どう考えても人口減少社会に明るい未来があるとは思えなかったからです。しかし、この数年で状況は一変しました。それは、加速度的に実用化が進み社会に浸透していく人工知能とロボットです。

移民は多くの問題を持ち込みます。それはここ数十年で多くの移民を受け入れたヨーロッパの国々が苦悩する姿を見るとよく分かります。受け入れた移民との経済的格差が生む孤立化、教育問題、医療設備の不足、それらがもたらす犯罪率の増加などです。イギリスのEU離脱の大きな原動力になったのがこの移民問題でした。

これに加えて日本には特有な事情が存在します。それは、日本人が生み出す独特な「日本的」な空気です。端的な例を一つ挙げれば、外国人旅行者がまた日本に来たいと思うその空気です。傲慢な言い方になるかもしれませんが、これは世界における唯一無二の価値だと思います。移民が増えることで、この財産ともいえる独特な日本的なやわらかさは衰退するのではないかと危惧します。

オックスフォード大学と野村総研による研究によれば、10~20年で労働人口の約半分はAIとロボットに代替されるとも予測されています。生産性を大幅に向上させるロボットや人工知能を活用することで国の競争力は格段に高くできます。そのような世界では人口過剰な国は自国民の雇用を守るために、積極的な導入が難しくなります。

人口減少社会の日本はこの点で優位に立てる可能性が大きいと思っています。日本がとるべき政策は、AIとロボットで世界をリードするための大胆な規制緩和、政府資金の投入、ロボット化を促進する税制などの諸政策ではないでしょうか。

(この記事は、過去に配信されたリンコム通信のバックナンバーです)

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